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透析看護師20年。体を壊して気づいたこと。

沈黙も、訪問時間。会話が苦手なわたしと、訪問看護の手順(生きていく手順書 Vol.10)

沈黙も、訪問時間。会話が苦手なわたしと、訪問看護の手順(生きていく手順書 Vol.10)

2026年7月3日

沈黙も、訪問時間。会話が苦手なわたしと、訪問看護の手順(生きていく手順書 Vol.10)

この記事は、シリーズで初めての「前編」です。

わたしはまだ、訪問看護を使っていません。使うかどうかも、決めていません。 でも、知りたかった。だから、使う前に調べました。

なぜ知りたかったか。 療養しながらのひとり暮らしには、「体調を定期的に見てくれる人が家に来る」という仕組みが、いつか要るかもしれないからです。

そして正直に言うと、調べる前のわたしは、こう思っていました。

「人と話すのが苦手なわたしには、苦痛でしかないんじゃないか?」

訪問看護って、何をしに来るのか

看護師が家に来て、見てくれるのは、こういうことです。

■ 体調(顔色・血圧・むくみなど) ■ 薬が合っているか、ちゃんと飲めているか ■ 眠れているか、食べられているか ■ こころの調子

うつなどの療養者向けには「精神科訪問看護」という形があります。 大事なのは、「観察」が仕事の芯だということ。おしゃべりは目的ではなく、手段のひとつです。

始まりは、役所ではなく診察室

訪問看護は、どこに電話すれば始まるのか。答えは意外なほど近くにありました。

主治医です。

医師が「訪問看護指示書」(精神科の場合は精神科訪問看護指示書)という紙を書くと、訪問看護が始まる仕組みです。 だから、扉を開ける言葉はこれだけ。

「訪問看護って、わたしも使えますか?」

いつもの診察室で、いつもの先生に、このひとことです。

お金のこと

医療保険が使えます(ふつうの受診と同じ負担割合)。

さらに、心療内科・精神科に通院している人は「自立支援医療(精神通院)」という制度が通れば、訪問看護も対象になって、自己負担は原則1割+所得に応じた月の上限つきになります。

くわしい条件は人によって違うので、正確なところは主治医とお住まいの市区町村で確認してください。 わたしも次の受診で、自立支援医療のことを相談する予定です。

形は、選べる

調べていて、いちばん「知らなかった」と思ったのはここです。

■ 玄関先で、という形もある(家に上げなくていい) ■ 散歩しながら、という形もある ■ 1回はだいたい30分ほど ■ 事情に合わせて、薬を持ってきてもらう形もある

「家に人を入れないといけないから無理」と思って諦めている方へ。 形は、相談できます。部屋を片付けてから、じゃなくていいのです。

わたしの正直な不安を、そのまま書きます

制度は分かりました。でも、わたしの中の不安は、制度の話ではありませんでした。

わたしは、人との会話がイヤでたまりません。 自分の気持ちを、言葉にできません。 いちばん苦手なのは「ねえ、どう思う?」「どっちが良い?」と聞かれること。 何を話せばいいのか、分からない。 家に人を入れるのも、緊張する。 そして、わたしなんかが頼んでいいのか、という不安。

訪問看護は、わたしには苦痛でしかないのではないかな?

看護師のわたしが、患者のわたしに答える

ここで、透析室で20年働いたほうのわたしが、答えます。

訪問看護は、会話のサービスではありません。

看護師が見に来るのは、顔色、眠り、薬、体の動き。観察が芯です。 話さない患者さんのそばにいることに、看護師は慣れています。沈黙も、立派な訪問時間です。

そして、これは知っておいてほしいのですが、希望は、最初に条件として伝えていいのです。

「会話が苦手です。質問攻めにしないでほしいです」

これは、わがままではなく、契約のときに伝えていい大事な情報です。 「話したくない」と言えること自体が、看護師にとっては、あなたを知る手がかりになります。

ちなみに、耳が聞こえにくいわたしですが、ここは心配していません。 家は静かなので、補聴器がいちばんよく働く場所だからです。騒がしい窓口や待合室より、ずっと。

結び。「今はまだ」でいい

ここまで調べて、いまのわたしの正直な気持ちを言います。

「今はまだ」です。

扉の場所は知りました。お金の道すじも、形が選べることも知りました。 それでも、今はまだ、頼まない。それがわたしの答えです。

でも、調べる前と後では、ぜんぜん違います。 「よく分からない怖いもの」だった訪問看護が、「いつでも開けられる扉」になりました。 いつか体がもっと動かなくなったとき、わたしは扉の場所を知っています。

知ることと、使うことは、別でいい。

この記事も、未来の私と、同じ場所に立つあなたへの手順書です。

ぼちぼち、いきましょう。


ゆるら(透析看護師歴20年)

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